2019年6月20日木曜日

宇宙ゴミやウイルスは見えないけれど あるんだよ  -風しんと麻疹 防げるものには最大限の努力を-  【№ 80】


梅雨入りを前に少し気持ちのいい青空をクリニックの窓から眺めることができます。気持ちが良いと感じるのは、気温や湿度がそうさせているのでしょう。同じ青空でも、冬や真夏では寒々と感じたり、じりじり恨めしく思ったりしているのだと思います。青い空!一方で最近銀河中心の巨大ブラックホールの撮影に成功したと発表されました。地球スケールの電波望遠鏡【イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)】世界各地の電波望遠鏡をリンクさせて実行地球口径(1km)サイズとして実現された快挙です。ちなみに、EHTを構成する世界6箇所8つの電波望遠鏡とは、南米チリ標高5000mアタカマ高地にあるアルマ望遠鏡、ハワイ島4100mマウナケア山頂にあるジェームズ・クラーク・マクスウェル(JCMT)望遠鏡、アリゾナ州3100mグラハム山サブミリ波望遠鏡、南極アムンゼン・スコット基地2800mの南極点望遠鏡、アルマ近くにあるアタカマパスファインダー実験施設望遠鏡、JCMT(ハワイ)同山頂のサブミリ波干渉計、スペイン2850mピコベレタ山のIRAM30m望遠鏡そしてメキシコ4600mシエラネグラ山のアルフォンソ・セラノ大型ミリ波望遠鏡だそうです。壮大かつ緻密なプロジェクトですね。“月面に置いたゴルフボールを地球から見分けられる”解像度だそうです。でも、なんでも吸い込まれると言うブラックホールよりも、白い雲を浮かべる青い空が良いな!
海洋のプラスティックごみ問題もさることながら、宇宙ゴミもなかなからしい。ソ連のスプートニクに始まって以降世界のロケット打ち上げは5400件、打ち上げられた衛星は8650基、宇宙空間にある衛星は4700基(内稼働中1800基)ほかデブリ(屑)サイズ10cm29000個、サイズ110cm75万個、そしてサイズ1mm1cm16600万個なんだそうです。(以上出典 日経サイエンス2019/7)
フロンガス、化石燃料CO2PM2.5いやはや地球をどんどん汚染しまくっている人類の現状を時に思い返して、自分のできることは何なのかと、せめて心を痛める一瞬がもっとあって良い昨今です。 青い空! 青い海!  ブループラネット!!

去年から今年、風疹と麻疹がわが国の空気中にその存在感を表しています。20153WHOより日本は麻疹排除達成の認定を受けたのですが、翌2016年に関空から持ち込まれて職員に感染し小流行の経験をしましたが、またしても20182019年以前よりも地域拡大そして収束の気配なく国内で感染する事例が多発していて、下手すると日本土着になりそうな勢いです。(麻疹 201923週 全国617名、大阪143名)
ラグビーワールドカップ日本大会2019、オリンピック、大阪万国博覧会と世界各国から人とともにウイルスもやって来る。早く国内収束を図っておかないと、多くの感染者が日本国内感染として世界に拡散しないとも限りません。麻疹は空気感染であり重篤になるウイルス疾患です。侮ってはいけません。
風疹然り。風疹は三日ハシカとも言われ症状は軽いのですが妊婦が特に妊娠初期に罹患すると先天性風疹症候群の児を出産することがあります。すでに今回の流行では20194週に埼玉、17週東京で計2例発生しています。そして風疹感染者は2018 年は 2,917 人が報告され、2019 年は第 12 週時点で 1,000 人 を超え、第 22 週までに 1,658 人が報告されています。(風疹 201923週 全国1718名、大阪113名)
そして、風しん第5期定期接種が2019年度から3年間で、昭和3742日~昭和5441日生まれの男性に実施されることが決まりました。今主たる風しん感染発症者は、この年令の男性で風しんワクチンを1回も接種したことがない集団だからです。抗体保有検査をし、決められた抗体価以上に抵抗力のない人にMR(麻疹・風しん)混合ワクチンを接種します。接種率が期待通りに上がれば、風しん、麻疹の有為な抑止集団になってくれるはずです。我々からも該当者の方々の積極的な受診をお願いします。



さてここで少し学術的なご報告をします。心斎橋クリニックのスタッフがまとめてくれたデータです。2018年心斎橋クリニック精査率ならびに精査受診率一覧表です。参考として掲げてあるのは人間ドック学会学術委員会およびがん登録委員会からの論文報告【人間ドックにおけるがん登録-2013年度の成績-】 人間ドック 33714729,2019 です。172施設1296千人、男性59.5%の統計報告です。
この表に現れていない重要な数字があります。それはこの論文の原著をお読みいただかなくてはなりませんが、一例をあげて置きますと、肺がん(胸部レントゲン)発見率は単純X線検査では0.020%で、これと比較して胸部CT検査では0.14%と約7倍高率の発見率であったそうです。精検受診率を100%と仮定すると単純X線検査では0.035%、胸部CT0.219%となるそうです。CTは精度よくても受診できる場の制約と被ばく線量の問題は消えません。健診クライアントの層別化(リスク)による健診内容選択が求められるでしょう。大阪西クリニックでは年間受診者数約1万人、心斎橋クリニックでは凡そ1万7千人ですのでそれぞれに、4人以上、7人以上の肺がん発見を目指さなければなりません。読影側としてはダブルチェックを基本として、胸部の経年変化を追うことによってより精度高く精検症例を選び出す工夫を続けていかねばならないでしょう。読影の精度に影響する読影環境ならびに心の安定(制約や擾乱のコントロール)こそが重要と思って居ます。
医公庵未翁  



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