2019年2月7日木曜日

今年のバレンタイン、あなたは誰に? 御節とローストビーフ 【№ 79】

「おっ! だんな 毎度」 20181230日、二年ぶりに訪れた灘区大安亭市場の山倉精肉店の意気のいいお兄さん。前年はアグン山の噴火直後の雨季のバリ島訪問で恒例のロースビーフ用のお肉を買わず仕舞い。小生を覚えていてくれたのは、白い髭のおかげかな~今日は一寸張り込むぞ。オ~良いブロックが店頭に。ローストビーフはサシが入りすぎては脂ぽくなってだめ。今日のはウデ肉らしい。芦屋のお肉屋さん竹園でも通販リストによく上がっています。これはイケル 900gram700gram。二つ頂戴!
 さて、今年は長男夫婦が年明けに帰ってくるので700gramを残しておいて、900gramが小生の担当とし、まずは赤ワインと塩コショウで一晩下ごしらえ。翌31日に室温に戻してからオーブンで焼き上げました。たっぷりのバターとニンニク、たまねぎ、セロリ、ニンジン、パセリを準備し、さっとフライパンで表面を焦がし、25012分、一寸薄めの肉のブロックなので140度で45分(*)の調理としました。焼き上げた後はアルミホイルで包み室温近くまで焼きなましの待ち遠しい時間が過ぎていきます。その間にオーブンパンに残った野菜とメイラードな肉汁を挿げ落としてブイヨンスープに混ぜて煮詰め、グレービーソースを作成しました。待ちに待った入刀の一瞬。ピンク色のお肉が顔を見せました。やった!このお肉は、来ていた娘夫婦、孫たち、次男であっという間に34消費されました。嬉しい限りの恒例2019年:平成最後の(?)我が家のローストビーフ顛末でした。
(*)(実際は40分がベストだったのは切ってからのお楽しみで、長男にアドバイスした結果長男の焼き上げはさらに美味くできました。写真参照)
メイラードな:私の造語 メイラード反応とは魚や肉、パンなど食材の中に含まれるアミノ酸と糖が加熱によって結びつき、起こる反応。香ばしい風味と褐色の焼き色が出ること。

 御節といえばカミサンの定番は炒りドリ(写真右手)、皺一つ無い黒豆、ぶりの背の部分の照り焼き。、昔はごまめ、数の子も作っていたのですが、焙烙でゴマメをあぶる役目の子ども達もおらず、ついつい手料理のレパートリーが減って来ました。炒りドリのニンジン形抜きは孫たちの仕事に移ってきています。最後に残った上記三品はやはり美味い。今では長女が3人の子どもを抱えながらも、御節をまめに作っているようです。小生の御節のルーツは祖母(たつ)にあります。12月中旬頃から段取りに入り、昔木造家屋の部屋は結構寒かったのでほっぺたを真っ赤にしながら炭を熾し、昆布と鰹の出汁をとり、お重に詰めていました。子どもの頃は結構好き嫌いがあったのですが、嗜好は歳とともに変化してくるのですね。懐かしさもあって当時の御節の味を追い求めています。今年のお正月は2回目、ちょっと張り込んで、梅市さんの3段重にしました。細工は祖母と比べ物になりませんが、やはりこの味に尽きるでしょう。



さて、最近身近に経験した医療の話題です。その1は高齢者の癲癇です。
高齢者では脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)そして認知症がよく話題にされますが、案外 えっ!癲癇 と思われるのではないでしょうか。若年の疾患と思われていますがいまや若年者よりも発症数は多いという外国の報告もあるようです。高齢者に見られる癲癇発作の特徴は(以下アルフレッサてんかんネットより引用)「部分てんかん」がほとんどです。発作は若年者に比べると二次性全般化発作が少なく多くは複雑部分発作で、けいれんを伴わない目立たない発作が特徴です。前兆症状は少なく、ボーっとする、不注意、もうろう、無反応、奇異な行動などで、こうした発作の後に意識がもうろうとした状態が数時間~数日続くことがあります。認知症の一症状と誤診されることもあります。発作とは別に過去のエピソード記憶が失われること(人生の大事なイベントを思い出せないなど)も高齢者てんかんの特徴です。高齢社会になってきている今診断されていない事例が多発してきているようです。アルツハイマー型認知症の高齢者の約20%がてんかん発作を併発するという報告もあるようです。転倒によって骨折などけがをする可能性もあり、適切な診断と治療が望まれます。抗てんかん薬による治療効果は良好で、8090%で発作が消失ないし抑制できるとあります。要介護者をご家族にお持ちの方はちょっと注意をして置いてください。そこでふっと関連する記事を思い出しました。18日の米科学誌電子版に、東京大学や北海道大学などの研究チームが、めまい治療薬「メリスロン」に、記憶を回復させる効果があることを実験によって確認し、アルツハイマー病などの認知症の治療に利用できる可能性があるとの論文が掲載されました。今後の展開が楽しみです。
Biol Psychiatry. 2018 Dec 19. Central Histamine Boosts Perirhinal Cortex Activity and Restores Forgotten Object Memories. Nomura H et al.

ちなみに、214日は何の日ですか? バレンタインの日。そう、ヨーロッパでは2011年から214日をヨーロッパてんかんデーと定め、国際てんかん協会を中心にてんかんに関するさまざまな啓発活動が行われています。なんのこっちゃ?男女を結びつける聖バレンタインではないのですか?(以下KYOWA KIRINHP領域から引用)聖バレンタインがローマ皇帝によって処刑された214日(西暦269年)には、イタリアの小さな町モンセーリチェの聖教会に現在でも数百人もの人々が訪れます。彼らは特別な祝福を受けて「金の鍵」を受け取るのです。「金の鍵」は子どもがてんかんを発症するのを防ぐという伝説があるためです。フランス北東部のアルザス地方に聖バレンタインの修道小院がありましたが、15世紀の終わり頃からてんかん者のための救護施設とされていました。1183年頃にライン川上流のアルザスにベネディクト派の修道院が建てられ、そこに聖バレンタインが祭られ、1468年に修道院に救護施設が併設されて、当時はてんかんは伝染するという誤った考えがあり、てんかんのある人を隔離する目的であったといわれています。
今年は一味違ったバレンタインデーをお過ごしください。慈愛のまなざしを忘れずに。

 その2はアミラーゼのお話です。あの消化酵素のアミラーゼは何処から分泌されるのでしょうか?
定期健康診査で少しアミラーゼが高いので再検に来られた女性の方が居られました。154U/l(基準値37126)で要再検。問診では健診前より耳下腺部位が腫れていて口腔外科受診で唾石否定されていました。形の如くアミラ-ゼ再検と同アイソザイム、ひらめいた追加検査として抗核抗体、抗SS-A抗体を提出しておきました。アミラーゼ668U/lと上昇して居り、P(すい臓)型50S(唾液腺)618、さらにANA160、抗SS-A抗体115(陽性)とでました。
この方は唾液腺由来のアミラーゼS型上昇で唾液腺の病状が現在進行中と考えられます。やがて唾液分泌不良を引き起こしてくると典型的なシェーグレン症候群(乾燥症状)となります。さらに気をつけなければならないことがあります。妊婦の抗体は経胎盤移行します。各種ウイルスに対する疾病予防の抗体移行は歓迎されますが、自己免疫疾患の原因抗体は歓迎されざる抗体です。バセドウ病、橋本病などの甲状腺がらみの抗体は頻度も多くしばしば周産期で問題になります。漫然と母体だけを治療していては自己抗体の移行・薬剤の移行も考えると胎児には不適切な胎内環境を作ってしまいます。頭を悩ませるところです。一方抗SS-A抗体はかなり重篤な胎児病態を引き起こす可能性がある自己抗体なのです。分化・成長進行中の胎児心臓の電気伝導系に作用してブロック(徐脈)を誘導し、ひいては広範囲の心筋障碍から胎児心不全を来たしかねないのです。妊活中のシェーグレン症候群の方は注意して置いてください。但し、抗核抗体や抗SS-A抗体の低値陽性の方は810%程度一般頻度として居られることも事実です(無症候性陽性者)。
唾液腺由来のアミラーゼは高ストレス者でも時々観察されます。健診の再検・精査は注意深く、その個人に適切な検査項目と判定が要求されます。

 何かと平成最後のという修飾語が聞かれます。今上天皇のお言葉に込められた思いをよくかみ締め、まさに平成の世に感謝しなければならない立春の日の光を優しく味わっている昨今です。 

医公庵未翁記   

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