2015年6月10日水曜日

蚊のシーズン到来 -旧興感染症のいたずら、新興・再興感染症- 【No.57】

 6月上旬に関西は入梅しました。その4~5日前頃からでしょうか、蚊が湧いて来て、水遣りでは数箇所以上刺されるようになっていました。この、例年汗だくになりながら蚊の猛攻を避けるため、つなぎの分厚い作業着を着て水遣りをして来ましたが、今年は薄いメッシュの上下を通販で購入して着始めました。効果ありそうです。それというのも昨年デング熱が関東地方を中心に流行し、関西では近くの西宮北口で1例発生しているからです。昨年は戦後帰還兵持込みによる流行以来70年ぶりの国内発生と騒がれました。都内代々木公園のイベントがきっかけだった様で、水周りのあるブッシュに富んだ環境(公園等)は絶好の蚊ひいてはウイルスが増殖する危険地帯といえるでしょう。ご記憶の方も居られるとは思いますが、私自身も、えっ、ほんまに?と思ったことが2013年に報道されています。それは、ドイツ人女性がドイツ国内に帰国してからデング熱を発症し、山梨県で蚊に刺されたと告知していたニュースです。その時はそれっきりだったのですが、翌年の国内発生とつなぎ合せてみると、すでにデング熱ウイルスは日本国内に侵入して定着しかけていると考えなければならなくなります。調べてみると、昨年の集団発生のウイルス、そうそう、ドイツ人(2013年)はデング熱ウイルス2型そして2014年代々木ウイルスは1型で異なるウイルスでしたが、実は1型でも異なる株のウイルスに罹った方が昨年熱海で発症していたのだそうです。輸入感染症として少なくとも複数(3つ)のウイルス株が近年日本に入ってきていることになります。温暖化にあわせてデング熱ウイルスを媒介するヒトスジシマカが東北地方を上昇中です。2010年は秋田県・岩手県中部辺りまでだったようですが、5年経ちまもなく青森県全域で観察されるのではないでしょうか。新幹線が青函トンネルを走る時代を迎え、蚊の生育環境として北海道の大都市部に到達、定着するのは容易と考えられます。動植物の分布境界線の一つであるブラキストン線(津軽海峡)はもはや意味が無くなり、見えざる人の環境構築(破壊)の表れといえるのも時間の問題かもしれません。絶滅していく種もあれば、のさばる種もあり、その最たる種がHomo sapiensといえるのかもしれません。海峡の冬景色を見て疼く心はいつの時代であっても消えないであってほしいと思います。

 2014年(昨シーズン)のインフルエンザは皆様如何だったでしょうか?A香港型(H3N2)が大流行しました。A(H1N1)型やB型は脇役だったようです。ワクチンを打っていたのに罹ったという人が多かったのではありませんか。私が産業医をしている企業でも、ワクチン効果なしと文句のひとつも言いたくなる職員が例年に無く多い経験をしました。5月14日に国立感染症研究所と厚生労働省が発表した報告書によると、昨シーズン流行したA(H3N2)亜型は抗原変異株、すなわち当初期待していた流行株ではなくワクチンの効かない株が、解析株の約80%を占めていたのだそうです。系統樹上明確に区別される株だったようで、実体験にフィットする数字だと思います。そこで来シーズン(今年)のワクチン製造は、4価ワクチンA型2種(H1N1は従来どおり2009カリフォルニアpdm09、H3N2はスイス/9715293/2013が選ばれヨーロッパ株の初登場)、B型2種(山形系統とビクトリア系統)の株が選ばれています。乞うご期待!

 さらに震撼させる感染症としては6月に入ってついにアジアに侵入したMERS(中東呼吸器症候群)のコロナウイルスです。韓国で発症者そして死亡者が出ています。もはや世界中に拡がる気配でME(mid East)の命名は相応しくなくなりました。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)を覚えておられる方も多いでしょう。当時は兵庫県を感染者が縦断旅行していた報告が思い出されます。まだまだ極東アジアでは動きが今後あるでしょうから、冷静に情報を見守っていきましょう。

さて縁あって5月中旬に熊本は大自然阿蘇健康の森にお邪魔しました。温泉を利用した癒しの施設や健康増進の施設が点在する中で、トリックアートの館のスナップ写真をお見せしましょう。目は景色を捉えていますが、見ているのは脳であることを実感できました。
http://kenkonomori.co.jp

では ごきげんよう

医公庵未翁 記



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