2014年9月26日金曜日

ガリヴァー旅行記 —二都物語とメンタルヘルス— 【No.51】

 秋分がすぎて秋らしくなって来ている今日この頃です。前回は中秋の名月、京都でのお月見のお話でしたが、その翌週末には奈良に出かけました。私が開発に関与した栄養のセルフチェックシステムが完成し、奈良ファミリー(西大寺)にて敬老の日のイベントとしてサイネージを使い、養成したコンシェルジュ10人共々開発者がデモを行ったからです。カミサン(熊本県菊池出身)が未だに法隆寺へ行った事がないというので、奈良西ノ京のドライブを計画しました。父は奈良のお寺の方が好きだと言っていましたが、二都を相次いで訪ねてみると両都のお寺の雰囲気の違いが分かる様な気がします。イベント会場(ちなみに2日間で154名の参加があったそうです)でご挨拶をしてから奈良盆地を西南に走り、以前のコラム(№10)でご紹介した事のある慈光院を素通りし、法起寺を経由して法隆寺にたどり着きました。残念ながら法起寺はジリ貧のお寺の感がありました。外観ではなく感じられる心があるかないかです。法輪寺に寄らなかったのが悔やまれます。鈍すれば貧する。文化は逆が成り立ちます。法隆寺ではラッキーな事に斑鳩の里観光ボランティアの会の松本宗久さんのご案内を受ける事ができました。2時間に亘り解説付きツアーで、今までとは異なり法隆寺の成り立ちが分かり、それぞれの仏様のお姿が意義あるものとして理解されました。夜はヒルトップテラスでちょっと張込んだディナー。ハンドルキーパーを申し出たカミサンに感謝して、スパークリング、白、赤のワインを楽しみました。私の二都物語の初秋です。

 

 さて、偶然にも最近中国のアニメビデオを購入しました。「大閙天宮」(Uproar in heaven)です。これは約50年前に製作された京劇風にバックミュージックと仕草が展開する美しいカラーの西遊記を題材としたアニメーションです。1991年にNHKの放送で「孫悟空対白骨婦人」を見てその美しさに魅せられビデオを探していたのですが、なかなか見つけられませんでした。このコラムを書こうと思って検索中に、偶然にも青森の中国語教材を扱っているHPで見つけたのです。ウィキペディアの記事を引用しますと;『大暴れ孫悟空』原題:大鬧天宮(:dà nào tiān gōng))は、1961年に上海美術映画製作所より製作された京劇仕立ての劇場用カラー長編アニメーション映画。上巻(1961年)・下巻(1964年)を分けて公開された。中国の伝奇小説『西遊記』第十三回「大鬧天宮」を題材にした作品。チェコで行われた第13回カルロヴィ・ヴァリ映画祭の短編映画特別賞、第22回ロンドン国際映画祭の最優秀映画賞、中国映画百花賞などを受賞した。文革期より上映禁止、フィルムが散逸するという事件も発生している。1978年より再び完全版が公開されている。また、2012年1月11日に『大鬧天宮3D』のタイトルで、画面の色彩デジタル化をして上映された。日本では2012年9月22日より日中友好協会では、日中国交回復40周年を記念して約43分の上巻が公開;とありました。

 

 これはおまけ。実はHallmark Entertainment社1995年のVHSビデオ、Gulliver’s Travels(ガリヴァー旅行記)のご紹介が主題です。1999年にアメリカアマゾンに直接頼んでの購入で、当時の金額で12.99ドル、送料が12.95ドルの記録が手元に残っています。2巻組187分で、ジョナサン・スウィフト原作に従って、リリパット国渡航記(これがもっとも有名でガリバー旅行記と言えば小人国のこの篇)、ブロブディンナグ国渡航記(反対に大人国に迷い込んだ小人としてのガリヴァー船長)、第3篇がラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダドリップ及び日本への渡航記、そして最後の篇がフウイヌム国渡航記のエピソードを取り入れた構成になっています。原作の小説タイトルは『当初は医師やがて複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』です。2から4篇はほとんど知られていないのではないでしょうか。しかし「天空の城ラピュータ」となれば今や知らない人の方が少ないかもしれませんね。しかし名前だけで内容は全く異なります。そして第四篇ではフウイヌムという平和主義でスノッブな馬の支配する世界においてヤフー(Yahoo)という野卑で醜さ(狡猾や邪悪、淫靡等)の強調されたホモサピエンスが登場します。ただし、よくご存知のYahooはYet another hierarchical officious oracleの頭文字だそうですがいわゆる、IT関連起業家の自尊心の裏返しとしての自虐的語呂合わせになっているのでしょう。このスウィフトの物語はけっして子どものための物語ではありません。当時(1700年代初期)のイギリス社会に対する批判的かつ風刺に満ちた著者の小説という形を通しての吐露であり、著者が意図せずとはいえ、読み様によっては現代社会に対しても示唆に富んだ内容となっているようです。所詮、人の世・人間模様は何時の時代も変わらないという事でしょうか。

 

 

 産業医の仕事関連ではメンタルヘルス健診が喫緊の課題となっています。どの企業においても休職・復職を繰り返す職員が増えており、うつ病の臨床像も昔と変わって来ています。自殺者も減少の傾向を見ないままに、若い世代を中心として、どちらかと言うと他罰的な言い訳に終始し身勝手な行動とも捉えられる不埒なうつ状態が散見されます(コラムNo.47 第8回元気セミナー 新型うつ参照)。折しも、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員数50人以上の全ての事業場にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法案(通称:ストレスチェック義務化法案)」が2014年6月19日に国会で可決・成立しました。来年度後期には実施の運びとなるでしょう。実施の方法論や受け皿の問題等解決しなければならない課題は山積していますが、ストレスフルで自己中心的な生き方への批判が寡少な社会において、これからも脆弱かつ未熟性に富んだ個性は容易にうつ状態に安住の時間と場所を見いだす事でしょう。多様性を豊かに認める慈愛と暖かさに満ちた寛容社会を健診の中でも創っていかねばなりますまい。人皆違う。みんな違ってそれで良い。  ごきげんよう

医公庵未翁 記



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