2014年8月26日火曜日

第9回元気セミナーを開催しました  こころを訊く 【No,50】

 今年も暑い夏、ゲリラ豪雨に見舞われた列島でした。長くご無沙汰していましたが元気で仕事を続けています。お盆休みには娘家族と南九州に出かけ、丁度終戦の日知覧の特攻平和会館に寄る事ができました。私の誕生日は1945年2月ですので一応戦中派になるのです。幼児期兵庫県相生にある生家の中に掘られていた防空壕に入った事があると聞かされています。播磨造船所のある町でしたので、爆弾投下や機銃掃射があったのだそうです。私の伯母も夫を爆弾投下で亡くしています。神戸で暮らし始めた幼稚園小学校低学年時代には、六角柱の焼夷弾の抜け殻で遊んだ記憶もあります。最近息子が20代となって当時特攻隊員の親の年頃となり・・死んではならない命・・あ〜戦争!
 知覧は今武家屋敷に観光客が集まっています。汗を掻きかき武家屋敷の庭園を巡って来ました。母ヶ岳を比叡山に見立てての借景は薩摩の小京都に当るでしょう。平和な日本に、一部の狂信に煽動される衆愚政治を二度と導入させてはなりません。一人一人の自覚を育み、心の豊かさを醸成していかなければならないでしょう。

 

 

 さて、先日8月22日(金)に第9回JML元気セミナーを新大阪メルパルクで開催しました。今年は少し趣向を替えた内容になっており、第1部は医療落語『落語で分かる心房細動と脳梗塞』で演者は林家染二師匠にお願いしました。染二さんとは彼が染吉時代に日本酒の飲み屋さんで隣席して以来20数年のお知り合いで、近頃は年に数回繁昌亭あるいは独演会の会場(今年は文楽劇場10月25日)にお邪魔しています。母子医療センターにはボランティヤー(もどきの金額)で来ていただいて、寄席囃子の楽器説明や実演、そして落語をしていただいた事がありました。最近はサイエンスづいて居られる染二さんで、京大宇宙研や岡山理科大生物地球(恐竜)部とのコラボレーションを精力的にこなしておられます。コミュニケーションの大切さが叫ばれる時代です。話芸の中にそして大阪のノリに一つのヒントが隠されているのでしょうか。当日彼の創作落語話の中には心原性脳塞栓症、ワルファリン加えて新しい治療法NOAC(新規経口抗凝固薬)がでて来ます。確かに健診をしていて無関心あるいは未治療の心房細動症例にしばしば遭遇します。自覚症状がないからといって放置されていたり、納豆好きの方が漫然とワルファリンを服用していてなんらNOACの情報をご存知でない等は珍しくありません。健診では主治医の治療方針を尊重しつつ、やんわりと医療の現状をお伝えする事もあります。またこの頃は翌年にカテーテルアブレーション(電気焼灼)で整脈になられて受診される心房細動症例の方も現れて来ました。『パンツ破れた』『またか』の小話を交えつつ45分の熱演を賜りました。

 http://www.somejirakugo.com

第2部は阪大医学系大学院心臓血管外科教授澤芳樹先生の『心筋梗塞と再生医療』の学術講演です。なんと・・心臓で人は死なない・・時代の到来を目指しておられるのです。彼とは母子医療センターで一時期ご一緒した事があります。私は母性内科で妊産婦さんのケアを担当していましたが、彼は小児外科系心臓血管外科医として将来の夢を秘めて働いておられました。その関係もあって超多忙な澤教授を弊社の第9回元気セミナーに演者としてお招きする事ができました。緒方洪庵の適塾を母体とする大阪大学医学部開学から、フィリッツ・ヘルテル先生を始祖とする阪大第一外科歴代教授のご紹介のなかに、第一外科のチャレンジングで和を尊ぶ教室運営のコンセプトを込めて話が始まりました。この外科学教室は、我が国の心臓移植の歴史においては国立循環器病センターと並んでエポックメイキングな事例には必ず登場する名門科です。そこには並々ならぬ歴代教授の強い意志があったに違いありません。その伝統を引き継ぎながらアップデイトなサイエンティフィックテクノロジ−を組み入れた、モダン循環器外科学を追い求める澤教授の今が、動画を取り入れたプレゼンテーションでリアルに語られました。教室では胸を開けずに(非開胸)低侵襲の外科を目指しておられ、大動脈ステントやTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)の実例を紹介されました。高齢社会において動脈硬化の一症状として発症する大動脈弁機能異常(特に重症の心不全となる狭窄症)にはTAVIは画期的な治療法です。健診における心雑音の聴取は同疾患を早期発見できる可能性があり、心房細動とともに健診項目の中でも今後重要な疾患の一つとして位置付けなければならないでしょう。
 さて、澤教授と言えば心筋梗塞に因る心筋壊死そして心筋症等で起こる心機能疲弊すなわち「重症心不全に対する自己骨格筋由来筋芽細胞シート移植術」です。まだまだ薄い筋芽細胞シートを4枚重ねて貼付ける現状から、将来はシートを文字通り肉厚にできるまでの3D構造にしたいと語られました。ニッチェとしてのサイトカインの役割と、今は骨格筋由来ですが更に心筋由来細胞シートそしてES細胞、iPS細胞等誘導多能性幹細胞の基礎研究ならびに分化誘導技術が相まって、生体をBioreactorとする自己組織化に因る心筋再生が最終目標の一つであると述べられました。

 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg1/www/
 http://spysee.jp/澤芳樹/1105859

 

 

 元気セミナーのあとの懇親会に澤教授、林家染二師匠の参加を得て、我々は有意義な時間を持つ事ができました。有り難うございました。

 さて、ここで高機能ポンプとしての心臓・循環器に関するまめ知識。
血液量:体重の女性7%、男性8%  4〜5L
血管総延長:10万Km 日本列島の33倍  万里の長城5.5往復
心臓の拍動:24時間1440分 心拍70回/分 10万回/日
心拍出量:1回 80ml  5〜6L/分  800万L/日 ドラム缶40本

次回は我が愛読書、ガリバー旅行記についてです。
残暑、お元気でお過ごしください。ごきげんよう。

医公庵未翁 記



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