2013年6月26日水曜日

赤身魚 ヒスタミン中毒 おまけのタテガミ 【No,46】

 梅雨らしい天候が続いている近畿です。ひろい日本では地域によって全く気象は異なるでしょう。初夏から夏への移行期、前線の動き、気圧の変化で、微妙に血圧の高い人が多くなる受診日があります。天候が定まる前日に多く観られるようです。「こんな血圧初めてや」とおっしゃる方が居て、戸惑いと再検を希望するクライアントも時々おられます。低血圧気味の方や本来120未満の血圧の方には上昇傾向があまり見られないのですが、普段正常高値以上の高血圧傾向の方で上昇傾向が強く表れるようです。毎日50人から100人近くの受診者の健診で感じることで、データとして取ったわけではありません。季節の変わり目とは言いますが、比較的短時間で気圧の変化する日に自律神経系やホルモンが環境適応として動いて(モード変換して)いる身体現象を表しているのかと考えています。不満そうな高血圧のクライアントに、今日の血圧は最大瞬間風速(血圧)と考えてみましょうというと妙に納得していただけます。もちろん塩分制限に留意して様子観察を続け、自己血圧測定の機会を増やすアドバイスは忘れませんが、このように人の体が反応している、血圧は常に変動している事実は、未病健康教育の一つとして毎日の診療で活用しています。

 前回、馬刺しを食することを止めないと宣言をしましたが、「たて髪」ついでに話題2題。内モンゴルの平原に立つパオで呼和浩特市の婦幼保健院仲間と羊一頭を食べた時のこと、羊の尻尾の根元にある黄色い三角部位、あれはどう見ても油の塊と思うのですが、珍味と称して病院の運転手さんが得意な顔をして頬張っていたのを思い出しました。他の職員はゲッエ~という顔つきだったのですが、小太りで気のよさそうな彼は啜り込むように食べていました。珍味だったんだ!食べておくべきでした。今思うに馬のタテガミに当たるのでしょうか。ヒツジは尻尾を振り振りしますね。馬のタテガミの意味は何なのでしょうか。セックスアッピール?ラクダのこぶのように脂肪(エネルギー)の蓄え?脂肪は魅力を演出しますものね!モーパッサンではありませんが、私は小太り傾向がタイプです。脱線する前に、ライオンのたてがみの色は大きく分けるとブロンド(金色)とブルネット(黒色~濃色)に分けられるそうで、原野におかれた本物そっくりに作られた雄のライオンのぬいぐるみ実験では、雌ライオンがすり寄るのは? ブルネットたてがみの雄ぬいぐるみが圧倒的勝利を収めたのだそうです。茶髪は少なくとも獅子座の女性にはもてないかもしれませんよ。

羊の尻尾脂:http://blogs.yahoo.co.jp/seiikicn/54725741.html

ライオンのたてがみ:http://kumakuma5050.blog71.fc2.com/blog-entry-118.html

 さて、本題に移りましょう。酢昆布のお話です。実は少しひねって、ヒスチジンのお話です。背の青い赤身魚は足が速いと言います。また、同じようにサバアレルギーがあるのですという方も少なくないでしょう。サバによって起こる時とそうでない時がある、体調に依るのかな、あ~それは産地の違いかな、古かったのかな。こんなやり取りは珍しいことではありません。古かったのかな~? ここがポイントです。サバを食べて蕁麻疹が出た経験はありませんか。蕁麻疹ならアレルギーと多くの方が思われるでしょうけれど、アレルギーにしては症状出現時間が一時間以内(時に数分)と早く、また毎回同じ食材で出ないのが特徴です。アレルギーは内因性、すなわち食べた人の体内で肥胖細胞から分泌されるのに対して、ヒスタミン中毒は食べた食材(サバの身、肉)に高用量のヒスタミンが含まれているために発症する外因性の症状なのです。いずれもヒスタミンで引き起こされるため発現する症状は酷似しています。皮膚症状としては顔面紅潮、紅斑、掻痒感、蕁麻疹(地図状の膨疹)、そして消化器症状として嘔気、嘔吐、下痢、全身症状は熱感、発熱、頭痛、倦怠・脱力感、めまい、動悸等です。

 

 

 病因は、天然にヒスタミンを多く含む食材あるいはヒスタミンの元であるアミノ酸の一種ヒスチジンを多く含んでいる食材にヒスタミン産生菌が働きヒスチジンをヒスタミンに替えて高用量となり、食して発症するという仕組みです。ヒスタミンとして100mg以上食べると発症するようです。このヒスチジンを多く含む食材の代表的なのが赤身魚(背の青い魚)で喫食する機会の多い日本では原因のほとんどが魚と言う事になりますが海外では鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ワインが報告されています。代表的なヒスタミン産生菌として有名なのはモルガン菌(Morganella morganii )ですが、海洋や魚の腸管、体表などにも低温性と中温性の2種の好塩性ヒスタミン生成菌(Photobacterium phosphoreum およびP. damselae )が存在し、季節性あるいは食材の加工性によりそれぞれが悪さを発揮しているようです。

 

 

 予防は? 食べないこと! そんな馬鹿なという話になりますが、増殖する細菌や高分子ではないためにヒスタミンは加熱処理しても分解されず、一旦食材中にヒスタミンが形成されると食べない意外に予防はできません。したがって食材が口に入るまでにどのように扱われてきたのかという経過が非常に重要となります。もちろんモルガン菌の活性を抑制するためにも低温で食材を扱うのは基本ではありますが、中・低温でヒスチジンからヒスタミンを産生する菌がいるだけに、冷蔵あるいは低温環境さえ確保しておけば大丈夫と言う事でもないようです。それだけに厄介で、ある意味では個人で予防しようのない食中毒と言えるでしょう。食べると胡椒の味のような刺激性や苦みを感じると言いますが、よほどでないと食べるのを止まることは難しいかもしれません。場合によっては珍味とさえ思うかもしれませんものね。ただ、病態はヒスタミン中毒ですので、速効性(時間を端折るなら点滴がベターでしょう)の抗ヒスタミン剤(のみ)が劇的に効きます。診断をしっかり行う事が大切で、そのためには直前の食歴(食材)に思いをいたし、これを医療者に告げることを忘れないようにしましょう。食するに臆病ならず、ワインにカルパッチョは続けます。

さらに詳しく http://www.mac.or.jp/mail/091101/02.shtml


鱧の季節、祇園祭、梅雨が早く明けないかな~

0 件のコメント:

コメントを投稿