2013年2月26日火曜日

欲とに酔った? Yocto から Yotta へ -サイズについてー 【No,42】

前回にも書きましたが、今年は冬らしく、地方によっては大雪も降り、梅の便りもところによっては2~3週間遅く、神戸市東灘区岡本梅林もまだ半分程度の開花のようです。まだまだ朝に野鳥の水入れが凍る日もあって、6時過ぎには夜明けを感じるとは言え、布団の暖かさには抗しがたい 魅力を感じてしまいます。今回は謎かけのタイトルをつけてみました。

 昨年秋から年末にかけては感染性胃腸炎(ノロウイルス等)がかなり流行して、やっと年初に例年並みに落ち着いて、そうは言っても2週間程前に大学の先輩とスーパーの牡蠣を酢牡蛎で大量食べた長男は見事に感染し、まだまだ油断のならぬ冬の感染症として注意を要するようです。一方インフルエンザはH3N2を中心に通常シーズン後半に出てくるB型が見られ始めて、これも例年のピークに少し遅れた2013年第5週(1月末週)をピーク週として流行は下方に向かっています。2009年の公共交通機関車内で見かけられた夥しいマスク着用状況に比べると、多種多様なマスクの形を楽しめる程度に着用者は減少し、しわぶき・くしゃみに眉をひそめる機会も今シーズン(2012/2013)は少なかったような気がします。替わりに昨今はむしろ花粉対策としてのマスクが主流のようです。未だにN95マスクの在庫を抱えている企業も少なくないかもしれません。N95マスクにも有効期限があるようで、あわや廃棄処分の憂き目にあう彼等たちにも、再び脚光を浴びる機会が巡って来たようです。ここでサイズを考えてみようというのが今回のテーマです。改めてN95とは?そしてマスクに再登場いただける相手とは? もうお気づきでしょう。PM2.5! では、ここでN95マスクのマッチアップを考えてみましょう。

 その前に、“キロキロとヘクと出掛けたメートルが、弟子に追われて(見られて)センチ、ミリミリ”をご存じの方、手を挙げてくださ~い。私はこれを小学校5年生の時の担任山路先生に教えられた記憶があります。補助単位の覚え方ですね。今になって、ネット検索してみると数学界で御高名な矢野健太郎先生の発案なのだそうです。皆さまもコンピュータ(二進法)や天文学、そして最新のサイエンス情報に身近に接する事が可能な時代ともなると、なにげなく使っている言葉が、キロからミリを超えて遥か桁数の違う単位に普段から馴染んでいることに気付いておられることでしょう。テラ、ギガ、メガバイト等そしてヘクトパスカルやナノテクノロジー。改めてこの単位を大きいものから小さいものへと羅列してみましょう。

 

 

調べてみると、今の時代の流れに応じた、新しい補助単位の覚え方が出来ているのだそうです。テラから始まりピコで終わります。 “てきめがけ、ヘクト出かけたメートルが弟子に見られてせんちミリミリ参ったな、ピコピコ”

 さて、N95に話を戻しましょう。N95とは米国労働安全衛生研究所 NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)が定めた基準で、粒子の捕捉効率を表しています。テストの詳細は割愛して、Nは耐油性無しの記号、そして0.1~0.3μmの微粒子を95%以上除去できる性能を有する製品という事になります。この基準は最低捕捉基準でさらに99、100(%)という基準もあります。サージカルマスクというのは、装着者の体液が空気中へ飛散するのを防ぐのが目的であるのに対し、N95は装着者が空気中の粒子を吸入するのを防ぐ目的を持つ製品の最低性能基準となります。さてここで、粒子の大きさが問題となります。どこまでの大きさの粒子吸入が最低限95%の保証を持って防げるのか、上表を改めてごらんください。μm(マイクロメーター)が見つかりましたか、10-6下段左から4番目です。試験粒子サイズは0.1~0.3とありますから100~300nanom(ナノメーター)粒子を95%トラップできるという事になります。  さて次は有害粒子サイズを考えてみましょう。

 

 

  大きな花粉は、埃として落下する運命にあり,またサージカルマスクでもある程度トラップされますが、花粉の周辺に付着している小粒子(ユービッシュ体、オービクル)にはアレルゲンとなるたんぱく質が含まれており、これが花粉から剥離して空気中を漂よい、通常のサージカルマスクではトラップされないで上気道粘膜に侵入する結果となっています。このアレルゲン物質は今問題になっているPM2.5よりも小さい粒子サイズなのです。一般的にPM(Particulate Matter) 微小粒子状物質のサイズでは肺の奥深くまで吸入され、喘息等アレルギーあるいは慢性に吸入され続けるとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の一因にもなる可能性があるでしょう。さて、ウイルスに目を移してみます。インフルエンザウイルスについてみてみると、2009年当時新型と言われたH1N1pdm(パンデミック)流行期に枯渇したN95マスクとウイルスサイズが微妙な位置にあることがお分かりになるでしょう。完璧に予防できるものではないことが当時にも言われていました。マスク着用の一番の問題点は凹凸ある顔面への密着性であることは自明の理。形状を合わせる機能無しではマスクの効果は半減いえそれ以下となる可能性があります。そして、昨年から今年特に流行したノロ、サポウイルスは、命名される前にはSRSV、小型球形ウイルスと言われていたごとく、インフルエンザウイルスの三分の一の大きさしかありません。感染経路は複数あって、食中毒として食材からの経口摂取、糞便・体液等処理不備による接触(経口)感染、そして吐物(体液)乾燥に依る浮遊ウイルスからの感染が小児、高齢者で特に集団生活を余儀なくされる施設内での多発事例の原因となっています。N95が持つ定義上の性能を上回る小ウイルスであることがお分かりになると思います。N95マスクが全く無為ではありませんが、体液処理現場での適切な薬剤使用と着衣扱いがいかに重要かが分かります。

 

 

 櫻の芽が少し膨らみはじめています。藤もしっかりと尖った芽を見せ始めました。春近しの期待を持って、花粉症は十分な予防対策と、治療(抗ヒスタミン剤、鼻づまりには抗ロイコトリエン剤)を続けてください。健診現場では気象による交感神経の緊張が続いているのか、血圧が高めにシフトしています。塩分過剰摂取に留意して冬を元気で過ごして行きましょう。

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