2011年9月30日金曜日

Mite Tick ダニ そして リケッチア 【No,21】

 まだまだ暑い9月中旬の連休の一日、阪急宝塚線沿線山本駅近くにあるあいあいパークに出かけました。ホームページの一部を引用しますと「あいあいパークは花と緑の情報発信ステーションとして、1000年の伝統を持ち、 日本三大植木産地の一つである山本に平成12年4月オープンいたしました。イギリスの美しい地方都市サリーの17世紀頃のたたづまいを再現した、お洒落で斬新な雰囲気が魅力です。グリーンショップ、見本庭園、ライブラリーカフェ、各種園芸教室、緑の園芸相談、レストラン、ガーデニンググッズや生活雑貨の販売などなど、中身も盛りだくさんです!とあります。

 http://www.aiaipark.co.jp/outline/aiai_pamphlet/index.html

 我が家の猫の額ほどの庭は暑い夏を過ぎて夏枯れの感がある植物だけが現状です。例のごとく、濃い液体肥料をやりすぎたためか(秤量もせずに目分量をスポイトでボトボト如雨露に落としてしまうため、性懲りもないいつもの私の癖)、申し訳程度の花を咲かせてその命を長らえているかわいそうなお花達にこの暑さは堪えたようです。思い切って刈り込んで、気温が下がって来たのでようやく息を吹き返しそうな昨今です。一方随分大きくなったオリーブの木は、例年花は咲けども実はならず(自家結実性が無い種類でよくできて2~3個の実)。近所にもオリーブの木が見当たらず、1昨年植えた2本目のオリーブは日陰のためか大きくならず、孤独な我が家のオリーブの木なので、今年は開花時ジベレリンをいっぱい吹きかけてその所為かオリーブの実が今年は30個ほど獲れました。友人に聞くともっと黒くなるまで置いておかなくてはアカンそうで、早々と青田刈りをしてしまったようです。今は2%の苛性ソーダ液につけてあく抜き中です。食べられるかな~、今度は苛性ソーダを幾度も水を交換して洗い流し、塩漬けにする予定です。つまみにまで熟成させられるといいのですが、とり置きのグラッパとの相性が楽しみです。
 あいあいパークでは、40cm程度のシマトネリコ、パキラなど観葉植物数種類と木製で額縁風の花飾りを買いました。カミサンの趣味ですが、手入れは私で眺めるだけの彼女です。奈良町で購入したこれもカミサンのお気に入りの木札とを並べて紹介しておきましょう。

 

 

 初夏から夏にかけて植物の手入れをしていると日に当たる明るいところをせわしく走り回る赤いハダニに気付かれる人は少なくないでしょう。今日はそのダニのお話をしてみましょう。節足動物門クモ綱ダニ目の愛すべき生き物です。社会のダニのお話ではありません。タイトルにあるTickは大型の吸血性のマダニ類でそれを含めてダニ全般をMiteとよびます。口部にある侠客いえいえ、鋏角が特徴で、これを持って対象物に喰らいつきます。古い話ですが私が米国サウスカロライナ州チャールストンに留学中の1978年春先に両親が観光旅行に来ました。サイプレスガーデン(ヌマスギ公園)に案内し、公園内の沼地をカヌーで周遊し草地で休みました。その晩「公一見てくれ」というので風呂に入ると、父の左肩に6mmほどのダニががっちりと喰らいついていたではありませんか。引きちぎっては鋏角が残るからダニの尻を炙れ、そうしたら熱くて口を放す、アルコールやマニキュア除光液(有機溶媒)で酔わす、左回転でねじり取るなどいろいろの方法論が巷にはあふれていました。結局ピンセットを使って鋏角を残さず肩から取り外すことが出来ましたが、それから父が帰国するまでは病気(ロッキーマウンテンスポッテッドフィーバ=紅斑熱)を発症しないかとずいぶん心配したものです。ダニと病気。そうです。有名な病気が日本にもあります。
 最近こんな記事を見つけました。広島県福山保健所は9月16日同市内の70代男性二人がダニに刺され、日本紅斑熱を発症。うち一人が死亡、一人は回復に向かっている。厚生労働省によると2008年に宮崎でやはり70歳代女性が死亡しているそうです。年間50〜60名の感染症例があり、近年増加傾向に有るそうです。恙虫病も北海道を除く全国で発症しており日本紅斑の約10倍、年間500〜600名の患者(マックス1000名)で推移しています。こんなに多いとは知りませんでした。いずれの病気もダニ内に寄生するリケッチアという病原体が原因です。ウイルスやクラミジアと同じく単独で増殖できず、寄生した動物の血管内皮系の細胞内でのみよく増殖するそうです。血管内皮が損傷を受けると、凝固線溶系の異常(播種性血管内凝固障害=DIC)から重篤な病態が引き起こされることになります。ちなみに日本紅斑熱はRickettsia japonica、恙虫病はOrientia tsutsugamushi(旧名R.tsutsugamushi)、ロッキー山紅斑熱はR.rickettsiiがそれぞれの病原体です。そうそう発疹チフスもR.prowazekiiというリケッチアで引き起こされる病気です。
 恙虫はダニ目ツツガムシ科のダニの総称です。ツツガムシ病リケッチア保有率は0.1~3%と言われています。恙虫病は古典型と新型に分けられているようで、前者はアカツツガムシというダニに吸着されて発症し、主に山形県・秋田県・新潟県を流れる最上川・阿賀野川・信濃川流域の風土病でした。河川に関連するのは、川を起点とする人の入山の行動様式と関連するからでしょう。後者は戦後に見られるようになり、タテツツガムシやフトゲツツガムシが媒介します。地域性が薄まってきている理由はバードウオッチングやネイチャリングツアーが盛んになり、山中深く分け入る機会が全国に拡がって来ているからと私は思います。通常ダニは山野に生息するげっ歯類(ノネズミ)や鹿等のほ乳類の体液を吸って生活環を形成しているようです。人はたまたまの感染です。

ダニは身近に居ます。街のダニとしてはアレルギーの元になるチリダニ(ヒョウヒダニ)、これは血液検査(IgERAST)で感作の状態を知ることが可能です。そして近年介護施設等集団生活環境で多発しているヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が厄介者として知られています。ヒゼンダニはヒトの皮膚に潜りこんで疥癬トンネルを掘り、激しいかゆみを発生させます。
 http://www.ylw.mmtr.or.jp/~noryuasa/su34.html

さて、今日はダニにまつわる話題を提供しました。
余談1:カミサンは佐賀県神埼郡吉野ヶ里町(背振)にある肥前療養所の卒業です。なんでヒゼンダニと叫んでいます。
余談2:大恩師阪大医学部山村雄一教授は講義の時、リッケチア、と言っておられたのを学生時代覚えています。あわてて教科書を自分で調べてリケッチアであることを確認したのが思い出されます。
余談3:高校時代、「つつがなし」という言葉をしっとるかという(渾名)髭の大原の国語の時間、ホ~と思って聞いた内容は間違っていたようです。【ツツガ=恙】はもともと病気や災難という意味であり恙無しはその原点から派生した言葉だそうです。それとは別に原因不明の発熱・発疹・筋肉痛を来たし時には死に至る病は恙虫という妖怪に刺されて(刺し傷が必ず見つかりますから)発症すると信じられていた。医学が進み病因が解明されて逆にこのダニが恙虫と命名されたのだそうです。

皆様も改めて 【ダニ】君を ウェブでいろいろ検索なさってみてはいかがでしょうか。



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