2011年8月30日火曜日

第6回 JMLグループ 元気セミナー 報告 【No,20】

 8月も終わります。今年は昨年に比べると朝晩は少し凌ぎやすいと感じます。でも日中は暑い。処暑を過ぎてなお汗の出る26日(金曜日)午後に弊社の第6回JML元気セミナーが新大阪近くにあるメルパルクで開催されました。テーマは『メンタルヘルス対策の質の向上をめざして』で日ごろお世話になっている顧客ならびに関係者133名の御参加を頂きました。

 

 

 会は2部構成で第1部は基調講演、演者は産業医科大学産業生態科学研究所精神保健学教授の廣尚典(ヒロヒサノリ)先生、そして第2部は【現場におけるメンタル・ヘルス-困っているのはあなただけではありません 現場における勘所-】のトークセッションで廣教授と私が担当しました。今事業所現場ではメンタル・ヘルスが社会の要請もあり大きな問題となって来ています。廣先生の講演にもありましたが、事業所規模に依存してメンタル不調者の頻度やその回復程度に差が出てきており、小規模事業所の深刻な実情が思いやられます。また事業所規模にかかわらず、休職・復職リピーターの問題がクローズアップされてその対応に労務担当者、あるいは事業所内産業保健スタッフが頭を痛めているのも昨今実感されています。
廣先生は著書[メンタル・ヘルス どう進める?職場復帰支援の実務](産業医学振興財団発行)の内容を中心に、
 ・職場におけるメンタル・ヘルス対策の基本的な考え方
 ・メンタル・ヘルス不調の多様性への対応
 ・職場復帰支援のポイント
 ・最近の行政の動向
 の4課題について、明快な語り口で内容の充実した基調講演を頂きました。
 対策の基本は疾病対策ではなく事例対応であり、クライアントそして職場の複雑かつ固有の背景分析に基づき、職場でできることとできないことを明確にし、主治医と十分な連携を図ることが重要との基本形をお話になりました。また今後は現場の意見を集約して作成・刊行される予定の対応パターン表の活用を強調されました。主治医は患者側の立場にあり、職場の環境情報も十分に得られないままでは通り一遍の判断しかできません。また診断書には強制力はなくあくまでも参考すべき意見書であるはずですが、それに従わなければの思いが強いあるいはそれをクライアントから迫られる事業者であることも事実です。今後はますます主治医との連携が重要であり、一方向ではなく、特に事業者からの情報提供が主治医にとっては不可欠であると理解して、対応表を用いることで類型化された内容の選択が出来て主治医からの適切な助言を得られやすいメリットを利用していかなければなりません。休職・復職は事業者が決定します。主治医の診断書でも、産業医の仕事でもありません。
 次に職場復帰のタイムスケジュールを5つのステップ(1.疾病休業開始及び休業中のケア 2.主治医による復職可能の判断 3.職場復帰可否および職場復帰支援プランの作成 4.最終的な職場復帰の決定 5.職場復帰後のフォローアップ)にまとめ、その折々にどのような情報を集約し判断していくのかを述べられました。ためし出勤運用の問題点ならびに本人復職後は、就業上の注意のみならず職場再適応プロトコールの中での受け入れ職場を作業環境管理としてどう調整していくのかが重要であり、適切な情報管理とともにフォローアップを怠らないことが再発を予防する基本であると説明されました。
 いや~、でも実際に担当する者は大変です。ご存じのように新型うつと称する新しい疾病概念が出てきており、それはとりもなおさず新しい問題が社会(事業所)の中で発生してきている現状の表れでしょう。トークセッションでは新型うつの背景に感じられる自己愛性人格傾向や適応障碍、学習障碍等の現実に触れ、受け入れ側の、時には偏見と片付けられるかもしれないけれど、余りにも身勝手な他罰傾向のパーソナリティに対する心情をどう今後解決するのか。今後は“ダイバーシティ”の社会的対応を進める中で初めて豊かな社会としてメンタルヘルス不調者を偏見なく受け入れていける、このような大計を持つ必要があるかもしれないと私は問題提議をしました。安全配慮義務、就業規則の整備等多くの課題を抱えまたその解釈と運用で悩んでいるのが事業者の実情です。トークでは少し詳細に廣先生とこのあたりをディスカッションしました。
 最後に、廣先生をセミナー演者としてご紹介くださったP社健康管理センター副所長伊藤先生の質問にお答えいただく形で無事トークショーを終えました。厚労省の特定健診、特定保健指導は4年目の半ばを過ぎており、メタボを主とした対策の一次評価を行わなければならないでしょう。この数年間にメンタル・ヘルス不調が、減らない自殺者の問題とも絡んで健診の次の課題としてにわかにクローズアップされて来ています。おそらく行政は試行錯誤を繰り返すでしょう。拙速な制度導入はかえって事業者そして働く者の混乱と不幸を招きます。喫緊の課題として今回の元気セミナーのテーマは時機を得たものと思われます。ご紹介の先生、並びに講演を快諾していただいた廣先生に改めて深謝いたします。

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