2011年6月24日金曜日

糖代謝異常のバイオマーカー 【No,16】

 祇園祭囃しの御稽古が京都では始まったみたいで、早くも関東熊谷では36度の気温が記録されました。小雪の舞う被災地の映像からまだ4カ月も経たない時間の流れは、人知の及ばぬある意味では過酷な現実の中で、人の利己的に暗躍する浅はかな行動がますますクローズアップされ、むなしく映る今日この頃です。
 厚生会の健診は最も多忙な時期を迎えています。メタボ健診が始まって、男性85cm、女性90cmの腹囲基準はその測定精度は別として、身近に見える健康の一つの指標として結構定着して来ているように思えます。【女性厄年お肌の曲がり角、男性厄年メタボの曲がり角】と言うと、ニタリと意味ありげに笑う方が増えてきました。40歳前後の男性は家庭、仕事の上で健康管理に十分な時間が取れない状況下にあります。帰りが遅く、夕食を食べて寝るの毎日では内臓脂肪は貯まる一方。成長盛りの子どもに合わせたメイン料理に、せめて一皿スローフードの個別要求は却下され、上と下に挟まれての仕事ぶりに手抜きはできず、ついつい酒量も喫煙量も増えるのは一種の労災ともいえるでしょう。「ジムに行く時間なんか取れません」はあながち言い訳ではない現実に、腹は七分目(八分目は甘い!)、階段をみたら喜び、エスカレーターの左を急いで上がる努力を続けるよう促し、せめて小汗をかく10分以上のウォーキングの機会を作る工夫を1年の目標にしてのアドバイスで健診を終えるのが現状です。それでも、最近は体重を落としてこられる方が増えてきました。体重1Kgはほぼ腹囲1㎝に相当します。企業戦士頑張れの毎日が続いています。

 特定健診でも関心の深い糖尿病について、ほぼ1年が経過した日本糖尿学会の改訂診断基準についてその要点を述べてみましょう。
 (I)HbA1c をより積極的に糖尿病の診断に取り入れ,糖尿病型の判定に新たにHbA1c 値の基準を設ける。
 (II)血糖とHbA1c の同日測定を推奨し,血糖値とHbA1c 値の双方が糖尿病型であれば1 回の検査で糖尿病と診断可能にして,より早期からの糖尿病の診断・治療を促す。
 (III)現行のJDS 値で表記されたHbA1c(JDS 値)に0.4% を加えた,NGSP 値に相当する国際標準化された新しいHbA1c(国際標準値)を暫時併用し、時期をみて移行させる。

 

 

 HbA1cは赤血球中にある酸素を運ぶ赤いタンパク質であることはよく御存じだと思いますが、血糖値が高く長時間持続しているとこのヘモグロビンに血中ブドウ糖が付いて化学変化が起こり、やがて離れなくなってしまいます。ブドウ糖というシミ付きヘモグロビンがグリコヘモグロビン(HbA1c)なのです。赤血球の寿命は約120日で半減期はおおよそ1カ月。これらを考慮すると、HbA1cはおおよそ1~1.5か月前の糖代謝の状況を反映していると言われています。血糖値が時々刻々変化しているのに対して時差(タイムラグ)はあるにしても空腹時や食後血糖の変動を含めて平均血糖値を知るには信頼できる検査です。糖尿病のスクリーニング検査としてやっと採用されたという感があります。  特殊な状況下ではありますが、赤血球の壊れやすい病態を持っている方、あるいは新しく赤血球が作られていく、すなわち若い赤血球が多い状態の妊婦さんではHbA1cは低値を示します。また、糖尿病でもないのに高値あるいは低値を示す遺伝的異常ヘモグロビン症の方が希に発見されることがあります。
 一回の健診機会であっても、血糖値との組み合わせにより、時間経過も含めてより的確にクライアントの糖代謝異常を評価できるようになるでしょう。

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