2011年3月2日水曜日

酔女と五国之酒 【No,8】

 草木萌動。日の出の時間がどんどん早くなり、東大寺二月堂のお水取り本行も始まりました。季節が移ります。さて、今回のイントロは兵庫県のお酒の話です。私は兵庫県相生市で生まれ、神戸で育ちました。途中仕事の関係から堺泉北ニュータウンで30年ほど暮らしていましたが、今神戸に戻って来ています。相生は造船の町。母は播磨造船事務所で和文タイピストとして勤めていたようです。そこへシティーボーイ然として神戸から経理に就職したのが父。ハイカラでロマンチスト、酔えば一夜さモンテカルロ(オペレッタ狂乱のモンテカルロ)を歌い出す父と、色浅黒く目鼻立ちのくっきりとした漁師町育ちの母は、それぞれに目立った存在だったのでしょう。結婚式の日付から計算しては、800匁で生まれた私の月数が合わない、戦時下燃え上がる恋愛に、激情の一時が彼らには在ったのでしょうか、オペレッタを実地の両親に80歳を超えてから問うても、明確な返事はありませんでした。幸いに私は満期安産の自宅分娩であったようです。

先日、三宮「千人代官」で淡路之国「都美人」の酒の会がありました。昨秋に続く2度目の出席です。酒造会社の社長、会長も出席して、お料理と蔵出しのお酒を楽しみます。今回は日本酒デビューを果たしたい次男坊を連れての3人で、合席は妙齢の女性二人組。彼女達は午前中に龍力(網干)を回ってのハシゴ酒席だそうで、話も弾み、楽しくそして美味しく都美人自慢のお酒を飲みました。前回も女性二人組が参加しておられ、それぞれによく下調べをして薀蓄もあり、精力的にお酒を楽しんでおられる女性にこのような席では巡り逢えます。やけ酒気味に飲む機会が少なくない男性に比べて、いかにも愉しく美味しそうに飲んで酔う女性に出会うと嬉しくなります。そうそう、お土産はなんと大吟醸の酒粕でした。ちなみに、NHKのためしてがってんを私は見ていませんでした。早速翌日は最近腕を上げてきたカミサンの粕汁。
なお、五国の酒とは兵庫県五国酒蔵之会、すなわち播磨之国からは龍力、但馬之国からは香住鶴、丹波之国からは小鼓、摂津之国からは福寿(酒心館)、そして淡路之国都美人が集まり一つのグループを作っています。今住んでいる東灘区はもちろん灘五郷の真っただ中。私は専ら福寿酒造東明蔵の斗瓶クラブで、量り売り瓶6本を保有し、有効活用(笑)しています。飲酒と酒粕等については次回のコラムで。

アーユルヴェーダ学会後抄録の最終回です。

【テーラーメイドな未病:Narrative Based Medicine】
 お産と未病の関係を、母体(女性)と胎児の観点から述べてみました。遺伝的負荷をもって命を授かった時点から人は環境負荷に修飾されてエイジングを始めます。それは胎内環境(胎盤循環と母体血液の質)に始まり出生後特に乳児期の栄養(広義の食育を含む)に運命づけられているのです。このエビデンスを基に、今後は未病の診断と情報提供、介入を図って行く必要があるでしょう。既にお気づきのごとく未病は単に身体的な健康のみならず、精神的、そして社会的健康をも視座に入れておかなければ人は幸せを達成できません。
 そのためには未病はエビデンスに基づく医療を、システムとして地域的・經時的共有と保護を同時に担保して実施していかなければなりません。また的確な未病診断すなわち将来に向けた健康観の熟成とその方法論の提示、その結果としての行動変容を期待するのなら、ナラティブベースドにその個人に寄り添う(対話に基づく)方法論を手段として取り入れて行かなければならないと思います。健康を「次世代への贈り物」として、妊娠時の医学的胎教を原点とする未病は近未来の医療の根幹をなすものと私は確信しています。

【エピローグ】
 私は今日本未病システム学会の幹事理事を務めています。昨年始まった特定健診・同保健指導は前期高齢者が対象です。多くの未病対象はこの年齢です。しかし、加えて命として育まれる母体の胎内こそ健康の原点と言って過言ではありません。しかも、成人後は本人の意志で生き方の選択が可能ですが、人の胎内期と乳児期は受動的な存在です。だからこそ、命を生み、育てるこの時期こそ、我々はリプロダクティブライツに合わせて、リプロダクティブデユーティ(義務)を果たさなければならないのではないでしょうか。2500g未満の出生が10%近くとなっている我が国において、改めて胎教のパラダイムシフトを確立していかなければならないと思っています。
 40年を経て、今、私の中で丸山博教授(元大阪大学衛生学教授)の顔が蘇っています。

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