なかなか伊勢にたどり着けない長い前置きでした。今回のスケッチ旅行は2泊3日の長丁場。不埒な3人娘(いずれも50歳代であることをお断りしておきます)は、1泊2日で伊勢観光も兼ねての計画を立てました。さしずめ私の役目はツアーコンダクターかな。スケッチは初日の1日だけ。不埒と云うのにももっともな理由があって、2日目夕方に帰るとすると、書いた絵の講評を受けられない。それでは意味がないから、いっそ朝から伊勢の風景を広く心に納め最後参宮のコースにて、スケッチの考案と精進をお祈りする発想に替えての計画としたのです。先生は別として、当事者はこれで納得。さていよいよ上本町から出発です!(つづく) 続きついでに、シリーズものを今回から始めます。身体には206の骨があり、それぞれの骨の主要な構造にも名前が付けられています。骨以外にもラテン名の解剖用語がたくさんあり、その中から身近な道具に通じる名称や、ちょっと興味深い名前を取り上げて解説してみたいと思います。 では、【解剖用語まめ知識】第1回目;耳小骨から始めてみましょう。まず写真1を観てください。(トワテック模型)3つの骨が繋がっています。その形から、ツチ(槌)骨(malleus)、キヌタ(砧)骨(incus)、アブミ(鐙)骨(stapes)と名付けられている人体最小の骨です。実際アブミ骨は約3mm:3mgですが、この骨無しでは音が聞こえないのです。そして梃子(てこ)の仕掛けから振幅の増幅が、そしてパスカルの原理から音の最初の受容組織である鼓膜の面積とアブミ骨底面積から伝わる圧力は10〜20倍に増幅される仕組みになっています。一方槌と砧は布等のしわを伸ばしたり、繊維を柔らかくしたりする時に用いられるたたき台(砧)とタタキ棒(槌)の関係にあります。こう書くとエツ!砧がたたき台?と思われるかもしれません。確かにこれは日本語訳あるいは東洋的道具立てではで少々難ありでしょう。しからば鍛冶屋さんを思い出してください。鍛冶屋さん?もう街では見かけなくなりました。私を含めて少し古い世代の方では、かなとこ(アンヴィル)と言えばハハ〜ンと思われるでしょうか。ヴェルディ作曲トロヴァトーレ第2幕での有名な鍛冶屋の合唱(アンヴィルコーラス)ではオーケストラはそれこそ金槌(ハンマー)音高く2拍子の伴奏をします。茶道では上質の青磁を砧青磁と呼んでいます。利休がひび割れをヒビキに掛けて、夜の静寂に響く砧打つ音からの連想が発端とも言われています。
ちなみにベートーヴェンが人生の後半聴力障碍に悩まされていたことは有名ですが、その病因は耳硬化症ではないかと言われています。これはアブミ骨の後天的異形成症と考えられています。 鼓膜から耳小骨を経て伝えられた音、そこには耳小骨筋が付着して過大な音量(エネルギー)や残響のコントロールもしているようです。更にアブミ骨の骨底は卵円(前庭)窓に嵌り込んでいて、音を蝸牛(聴覚器官)に伝えます。よくしたもので正円窓(蝸牛窓)はちゃんと音の出口となっています。進化とはいえ誰が設計したのか、体は機能に美しさを備えて、我々の命を支えてくれています。 身体髪膚これ父母に受ける、このシリーズを通して、少し自身の体を慈しむ機会になればと考えているところです。
0 件のコメント:
コメントを投稿