2015年9月16日水曜日

あなたはピロリ菌を体内に飼っていませんか?  今年の夏旅行 –山と海‐ 【No.60】拡大版

 2015年の夏シーズンも撤退してはや季節は白露を過ぎ、朝晩は随分と凌ぎ易くなりました。しかし線状降水帯が初夏から初秋にかけて大暴れしていて、近年日本のあちらこちらで風水害を引き起こしています。今年9月には常総市辺りの鬼怒川そして宮城県大崎市の渋井川が相次いで決壊しました。鬼怒川では堤防決壊場所は以前から危険性が指摘されていて近々改善が予定されていたのだそうです。満々と水をたたえて流れる川は少しでも喫水の低いところから堤防越水するでしょう。いつも書いているように、災害の端緒すなわち破綻し拡大する理由は感染症と同じだなと思いました。

 お盆休みは医師会関係で上高地~乗鞍~高山ツアーに行きましたがあいにくの天候不順で、この夏の気象はこの辺りから怪しげに気団のぶつかりから生じる不隠な空模様となっていきました。医師カップル2組とホテルのbarで飲み、意外に旅行を選択するバイアスから共通点も多々あって、おいしいお酒を楽しみました。(この旅の撮影カメラはCanon Eos)

8月最後の終末には、長女家族(4人)とペットを連れて串本~紀伊大島に2泊3日の旅行に出かけました。宿泊は友人に勧められた大島リゾート
http://www.resortohshima.com/)でコテージを予約し、シーカヤックを楽しむ予定だったのですが、あいにくの天候でアクティビティは中止。太地のくじら博物館(http://www.town.taiji.wakayama.jp http://www.kujirakan.jp/)をゆっくり楽しみました。いるか・くじらショー、ふれあい体験等家族は大喜びで私は写真係に徹しました。というのも新しいNikonの一眼カメラを使いたくてしょうがなかったからです。ボディはD5300でレンズは交換の手間を省くためちょっと踏ん張ってNikkor18-300mm F/3.5-5.6 ED VRの一本です。フィルターサイズ77mmでずっしりとやはり少々重たいですが、これが堪らない。しっかりホールドして、カミサンのHulaを楽しむ会でその威力は実証済み。ND8フィルターも取り揃え、接写リング(Kenko)の出番を待っているところです。

山の旅篇

海の旅篇


ところであなたは、ピロリ菌を飼っていませんか?
すっかり有名になっているピロリ菌の周辺が少し賑やかになってきました。

 Helicobacter pylori は胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎そして胃ガン、血小板減少症等多様な疾患の要因として認定され、胃カメラ検査、血清抗体価測定、尿素呼気ガス法、便中抗原検査で保菌状態が診断されて除菌治療が導入されています。また最近ABC検診が上部消化管レントゲン検査に取って替わろうとする誤解も生じています。健診受診者の方々から、そのような発言が聞かれるので、ABC健診はあくまでもリスクの検査であって、もっとも委縮性の判定はできるにしても、画像診断あるいは胃カメラ検査に取って替わるものではない説明をしています。

 そして厚生労働省が来年度にも導入予定している新たな胃ガン検診の方法がもめています。X線(バリウム)検査に加えて内視鏡検査が選べる様になるのは良いとして、毎年から1年おきに延びる事に依るデメリットが問題になります。精度高い検査が導入されるのは良いけれど、内視鏡はバリウム検査ほどには受診機会(どうしても施設健診となり、巡回検診での検診バスの増設と実施医療従事者の確保等を解決する必要性あり)が多くなく、2年毎に依るがんの進行も懸念されるからです。

 ABC検診として組まれているhelicobacter抗体価でも新たな問題が発生して来ています。いわゆる抗体価測定でcut-offされる10未満3以上の陰性高値群の扱いです。除菌後の時間的経過も考慮しなければなりませんし、単純に陰性として割り切ってしまうと、その群に含まれる有リスク者の足切りになる可能性があるからです。多少のリスクが無視できない群である事を受診者に解説しておかなければなりません。今期中に関係諸団体から何らかの運用についてのガイドラインが出てくれる事を期待しています。

 そして なんと! Helicobacterには悪さをしているであろう仲間がピロリ以外(Non-Helicobacter.Pylori Helicobacters NHPH)にも居る証拠が出始めて来ました。Helicobacter heilmanniiは犬や猫にも感染する人畜共通感染症で、菌体の両側に鞭毛が付いており、逃げ足が速く? 尿素分解酵素活性は弱陽性もしくは陰性で検出されにくいのだそうです。萎縮性胃炎を起こさず、今のところ他の胃病変、例えば鳥肌胃炎、MALTリンパ腫そして胃ガンさえもがNHPHに依るのではないかと考えられています。同様な症状を引き起こすとしてH.suisも含めてNHPHのうち主に胃に寄生するGastric Helicobacter 属の研究が進んできている様です。他に腸や肝臓に生息するEnterohepatic Helicobacter 属も無視できないようで、H.hepaticus は胆石や肝疾患と、H.muridarum は腸の炎症性疾患、そしてH.cinaedi はなんと動脈硬化等血管の炎症と関係しているのではないかと考えられている様です。今後研究が進み、Helicobacter 属の病態、診断と治療(除菌)に関して次々と明らかになって行く事を期待しましょう。

 まもなくSilver week で郊外へお出かけの方も多くいらっしゃる事でしょうが、覚えておられますか? SFTS 重症熱性血小板減少症候群。只今日本列島北上中だそうです。山に入られる方々、帰って来られたらダニの咬傷に注意を払ってください。

      では ごきげんよう

医公庵未翁 記



追記;私のコラム№54でこのように感染症を書いています。“前にも申し上げた様に、人の勝手、浅知恵=無知、油断=手抜き、打算に忍び込みます。悪意はないとはいえ、このように敵から守りたい大切のものに対して、真摯に立ち向かっていかねばならないでしょう”。確かに人の持つネガティブな側面からの感染症の拡がり理由でした。しかし最近読んだ国境なき医師団の救急医中山恵美子さんがお書きになった文章中に、“エボラは、病に倒れた人たち、また彼らを敬愛した人たちの愛情や感謝、尊敬という、人間の持つ美しい感情に乗じて拡散したのである”にはっとさせられました。見失ってはならない医師の目に気づかされた記述でした。まだまだ未熟な私を自覚している昨今です。

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