2015年2月2日月曜日

琉球松のマツ枯れは深刻です —感染症は人のみにあらず— 【No.54】

 2015年も、はや1ヶ月が過ぎました。昨年暮れの12月29日に高さ1.2mの脚立に登って浴室外壁のカビ取りをしていたら、足が引っかかり滑り落ちました。割合上手くお尻から落ちたまでは良かったのですが、次の瞬間重さ5.6kgの脚立が倒れて来て、額に約3cm長の深い割創を受傷してしまいました。幸い眼鏡は割れずに済み、休日(年末)診療病院で6針縫合していただきました。高齢者は高いところに登ってはダメですよ、まずは頭を守るのが優先等々アドバイスを受けましたが、終わり頃に既往歴や内服薬をきっちり書いていますねという段階で内科医である旨告げると、おじいちゃん扱いから態度が変わりました。外来受診患者さんの不安な気持ちが少し経験された年末でした。

 受傷前の12月23日から3泊4日の八重山諸島ツアーに参加して来ました。石垣空港を起点として竹富、小浜、由布、西表、石垣を巡る旅です。北緯24〜25度に分布する日本最南西端の島々での冬は日中24度もあり、暖かいクリスマスの日を過ごしました。
ラッキーな事に23日の夜は、今年の12月としては2回目と言う晴天に恵まれ、折しも新月、小浜島にある日本最南端。・最西端のゴルフ場:リゾナーレ小浜島カントリークラブのフェアーウェイに寝コロがり、満天の星、天の川(ティンガーラ)、流れ星を楽しむ事ができました。お願い事は『ぼけて迷惑をかけぬ様』とは我ながら些か夢もない情けない気もしましたが、とっさの思いつきは現実的なものでした。今住んでいる神戸市本山町(旧武庫郡本山村北畑字保久良通り)でも昭和30年頃には流れ星や銀河が普通に見られましたが、当時のたわいのない子どもの夢はもう忘れてしまいました。果たして叶ったのでしょうか? 石垣の川平湾ではグラスボートで珊瑚礁を眺め、イソギンチャクに戯れるクマノミやアコヤガイが印象的でした。マングローブの生い茂る川の遡行ではカワセミが一瞬舟先をよぎり、星砂の浜辺ではホシズナやタイヨウノスナという有孔虫が手にいっぱい付着して、なんだかこの自然がもったいない気がしました。
 一方、夜毎(+昼も時に)の泡盛を夫婦で楽しみました。八重泉、請福、高嶺各酒造会社の数目柄です。十分な水分を飲みながらではありますが、私はその土地の酒を飲む事をやめていません。最後の日、石垣のホテルでの夕食。テーブルを担当してくれた八重山農林高卒の若いK君が僕のおごりですと3種の泡盛カクテルをサービスしてくれました。「そんな事していいの?」と聞いたら「ここは良いんです。お客様との関わりを大切にしているんです」という答えでした。上司も出て来て「ありがとうございます」とご挨拶いただきました。バスのドライバーの皆さんを含めて、八重山諸島で接した皆様、良い会話と時間を有り難うございます。僕の好きな夏川りみさん、素敵な歌を発表していってください。“にぃ ふぁい ゆう” 心から有り難う!

 

 

 ツアーで気になったのが琉球松のマツ枯れ現象です。深刻な状態にあると思います。あのダンディで凛とした姿勢の琉球松が哭いています。蚊で媒介されるデング熱と同じ仕掛けで、松が悲鳴を上げているのです。マツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウ(マツ材線虫)病という寄生虫感染症の一種です。元々は北米原産種で1930年代にアメリカ産のダイオウマツから発見された体長1mmほどの三日月形で雌雄の区別がある寄生虫です。餌はマツの柔細胞と菌類であり、実験室内では菌類を餌に培養することが可能だそうで、Wikipediaに依ると「ヒゲナガカミキリ属のカミキリムシ(以下カミキリ)の蛹の気門に入った線虫はカミキリ成虫が羽化するまで待つ。カミキリが羽化し、成虫が餌として齧る健康なマツの若枝から健康なマツの樹体内に侵入する。この時期は後述のカミキリの生活環にもよるが、一般に5―8月の初夏~盛夏の時期である。マツ体内では樹脂道を使い移動、交尾・産卵を繰り返しながら増殖する。このとき抵抗性の(松)種では線虫の移動は部分的であるが、感受性の(松)種は全身に移動し分布するようになる。また、線虫の増殖は感受性種であっても最初は穏やか、マツが目に見えて弱り始めてから爆発的に増えると言う。マツは線虫の侵入(感染)から2週間程度で樹脂の分泌が減少を始め、2-3カ月程度で急激な葉の変色と枯死に至る。弱ったマツはカミキリの格好の産卵場所であり、カミキリが産卵に来る。線虫は枯死木の中で青変菌などを食べながら増殖しカミキリに乗り移る機会を伺う。年が明け産みつけられた卵が成長し蛹になると線虫は蛹の気門に潜り込み新しいマツへの感染を繰り返す。」そうです。輸入感染症ですね!
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/ringyo/byotyu/by-zaisentyu.htm
http://www.ggg.or.jp/matugare.html

 

 話し変わって、今シーズンのインフルエンザはH3N2(香港型)が大流行です。私の息子はワクチンを接種したにもかかわらず罹患しました。私が産業医をしている企業でも31名の感染者のうち23名がワクチン接種者でした。まだまだ流行は続きます。今シーズンの日本のワクチンは一工夫あって、H3N2に関してはA/ニューヨーク/39/2012 (X-233A)は、依然として卵馴化による抗原性の変化の影響を受けてはいるものの、A/テキサス/50/ 2012(X-223)ワクチン株よりはその程度が小さいことから、2014/15シーズン用のA(H3N2)ワクチン株としてA/ニューヨーク/39/2012(X-233A)を選定していたのですが、その効果はやはり期待を裏切られているしたたかなインフルエンザの勝利である様です。あっかんべー!敵も然る者です。感染症との知恵比べ。戦いはまだまだ続きます。前にも申し上げた様に、人の勝手、浅知恵=無知、油断=手抜き、打算に忍び込みます。悪意はないとはいえ、このように敵から守りたい大切のものに対して、真摯に立ち向かっていかねばならないでしょう。

 ごきげんよう を再び!

 



医公庵未翁 記



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