2012年10月20日土曜日

お伊勢参り -スケッチ旅行道中顛末期 その1- 【No,37】

 めっきり涼しくなって、熱中症が話題となっていたあの暑い夏がうそのよう。人は肌寒さに少しサブイボの出た肌をさすりながら、クールビズよりは少々ドレッシーに衣服を着こなして季節を過ごしているようです。  前回は尻無川左岸から見て、斜張橋の向こうに連なる武庫の峰(本山第一小学校校歌歌詞)が写る写真を掲載しましたが、カミサンのスケッチ旅行第2回目は志摩大王崎灯台がテーマの旅行で、愛用のカメラをぶら下げ付いて行きました。私は絵心まったく無しなのになぜ、カミサンが習っている絵画教室のスケッチ旅行にのこのこ付いて行けるのか?少し説明をしておきましょう。  私は小学校1年生にザクロの水彩画で神戸市の展覧会に絵が出品されたことがありますが、それは親ばかの始まりにしか過ぎず、以後一切まともな絵が書けたことはありません。中学校では夏休みの宿題提出をのばし延ばしにして、中安明暗先生のお目玉を食らうありさま。もちろん美術の成績は最低及第点。デッサン力が全くないのは重々承知で、今は書いてみようと思ってもみません。絵画の鑑賞は大好きでそれなりの知識と意見は持つのですが、ひょっとすると自覚する劣等性に本来負けず嫌いの虫が絵を書くことに対して封印をかけているのでしょう。一方父はとても絵が上手で、絵画に関して薀蓄を傾けることはなかったけれど、サラサラと絵が書ける人でした。シルクロードの絵で高名な中村百合子先生にかつて油絵を師事していましたが、彼女が2000年9月(68歳)に東京で客死され、父は教えを請う先生を失いました。その後行きつけの画材屋さんに、阪神間で絵を教えている教室が無いかと問うたところ、戸高明義先生の芦屋教室を紹介され、父は2005年2月に亡くなるまでの4年間熱心な生徒であったようです。生前には、大阪三津寺界隈にある画廊で毎年開催されている戸高教室生徒による絵画展に我々を案内し、私たち家族は2001年11月24日戸高先生に初めてお目にかかりました。  一方、カミサンは泉北に暮らしている時に有永淑子先生の絵画教室に友達に誘われて通っていましたが、この先生も2006年石川に移られ程なく亡くなられました。絵をかかない私ではありますが、有永先生とは育った時代背景に共通の部分があり、随分の機会先生の御自宅でお酒を頂いたりしていました。6~7点の先生の絵が手元に残っており、そのうち私の好きなレモンの2号を梶井基次郎【檸檬】の最終章のプリントとともに診察室に掛けています。父の死と、有永先生の死とが比較的似通った時期でもあり、ちょうど戸高先生が難波教室を開催されていたのでうちのカミサンは2007年ごろから戸高教室泉北3人娘といわれる所以のお友達二人を誘って水彩教室に通い始めた次第です。

 

 

 なかなか伊勢にたどり着けない長い前置きでした。今回のスケッチ旅行は2泊3日の長丁場。不埒な3人娘(いずれも50歳代であることをお断りしておきます)は、1泊2日で伊勢観光も兼ねての計画を立てました。さしずめ私の役目はツアーコンダクターかな。スケッチは初日の1日だけ。不埒と云うのにももっともな理由があって、2日目夕方に帰るとすると、書いた絵の講評を受けられない。それでは意味がないから、いっそ朝から伊勢の風景を広く心に納め最後参宮のコースにて、スケッチの考案と精進をお祈りする発想に替えての計画としたのです。先生は別として、当事者はこれで納得。さていよいよ上本町から出発です!(つづく)  続きついでに、シリーズものを今回から始めます。身体には206の骨があり、それぞれの骨の主要な構造にも名前が付けられています。骨以外にもラテン名の解剖用語がたくさんあり、その中から身近な道具に通じる名称や、ちょっと興味深い名前を取り上げて解説してみたいと思います。  では、【解剖用語まめ知識】第1回目;耳小骨から始めてみましょう。まず写真1を観てください。(トワテック模型)3つの骨が繋がっています。その形から、ツチ(槌)骨(malleus)、キヌタ(砧)骨(incus)、アブミ(鐙)骨(stapes)と名付けられている人体最小の骨です。実際アブミ骨は約3mm:3mgですが、この骨無しでは音が聞こえないのです。そして梃子(てこ)の仕掛けから振幅の増幅が、そしてパスカルの原理から音の最初の受容組織である鼓膜の面積とアブミ骨底面積から伝わる圧力は10〜20倍に増幅される仕組みになっています。一方槌と砧は布等のしわを伸ばしたり、繊維を柔らかくしたりする時に用いられるたたき台(砧)とタタキ棒(槌)の関係にあります。こう書くとエツ!砧がたたき台?と思われるかもしれません。確かにこれは日本語訳あるいは東洋的道具立てではで少々難ありでしょう。しからば鍛冶屋さんを思い出してください。鍛冶屋さん?もう街では見かけなくなりました。私を含めて少し古い世代の方では、かなとこ(アンヴィル)と言えばハハ〜ンと思われるでしょうか。ヴェルディ作曲トロヴァトーレ第2幕での有名な鍛冶屋の合唱(アンヴィルコーラス)ではオーケストラはそれこそ金槌(ハンマー)音高く2拍子の伴奏をします。茶道では上質の青磁を砧青磁と呼んでいます。利休がひび割れをヒビキに掛けて、夜の静寂に響く砧打つ音からの連想が発端とも言われています。

 

 

ちなみにベートーヴェンが人生の後半聴力障碍に悩まされていたことは有名ですが、その病因は耳硬化症ではないかと言われています。これはアブミ骨の後天的異形成症と考えられています。  鼓膜から耳小骨を経て伝えられた音、そこには耳小骨筋が付着して過大な音量(エネルギー)や残響のコントロールもしているようです。更にアブミ骨の骨底は卵円(前庭)窓に嵌り込んでいて、音を蝸牛(聴覚器官)に伝えます。よくしたもので正円窓(蝸牛窓)はちゃんと音の出口となっています。進化とはいえ誰が設計したのか、体は機能に美しさを備えて、我々の命を支えてくれています。  身体髪膚これ父母に受ける、このシリーズを通して、少し自身の体を慈しむ機会になればと考えているところです。

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