2011年1月26日水曜日

卯年が明けて ー冬のグルメー 【No,6】

 2011年も大寒を過ぎ、皆様はお元気で新年を迎えられ、酷寒、大雪の時期をお過ごしの事と存じます。前回お話ししましたように、私は年末清荒神に久しぶりにお詣りし、母の買い求めていたお札を数年ぶりに更新する事ができました。お札の有効期間は一年とあります。やれやれ、これからは毎年の恒例行事にしていかなければご利益は続かない様です。明けて新年は近くの保久良神社そして神戸の生田神社に参詣しました。そして、落語林家一門の顔見せ新春繁昌亭公演では、先に堀川恵比寿さんで吉兆を買い求め、俵に福袋をサービスで付けてもらい、ご機嫌で高座終了後行きつけの主税寿司に流れる1月10日でした。今年は福井にお住まいのT先生ご夫妻にお招きを頂き、サンダーバードに乗って三国漁港の川喜さんで20年ものの越前蟹を食べる事ができました。翌日は雨の中、吹き付ける風の東尋坊、雪の永平寺を廻り、越前おろし蕎麦の辛味に少し胃がギュンとなり、恐竜博物館、愛宕山茶道資料館の120kmをT先生の運転で巡りました。帰神後にはゲンゲ(水魚)、ガサエビを川喜さんよりわざわざ送っていただき、福井の希有で美味な食材を堪能する事ができました。
                           僧堂に 剃髪の蒼 雪明かり
 さて、年明けて再び未病シリーズを数回に分けて続けたいと思います。一昨年アユルヴェーダ学会で講演した内容の後抄録を少し編集して私の未病の考え方をお伝えしたいと思います。ご意見等頂ければ幸いです。

                         現代医学的胎教 −周産期からの未病−
 我々は生まれそして育ち、一人前の人として思春期頃より自己の選択権を無意識に行使して自らの生活環境を構築し、周囲の状況の所為と独りよがりに責任を転嫁してエイジングの道を歩んで行きます。そして疾病予防、特定健診や医療機関の対象となるのは通常40歳以降。そして腹囲、BMIに一喜一憂して毎年の健診をやり過ごして行きます。ところで、皆様はご自身の出生体重をご存知ですか?

 【プロローグ】
 40年前生化学に夢を抱いていた医学生にとって、衛生学教授のアユルヴェーダ紹介の講義と演習は、正直心に響くものではありませんでした。卒業後は微視的な病因・病態の診断に得意となり、夜遅く迄のヘモグロビンの構造と機能の実験に明け暮れていた卒後10年でした。30歳半ばで周産期医療施設の母性内科を立ち上げる仕事に就き、産科、新生児科のフィールドに十分載れない数年を経て、多くの文献を読破し出産に立ち会っていく中で、妊娠経過はまさに内科領域の思考過程が不可欠で、目標として母体と、胎児両者の健康を得るべき予防医学でなければならないと思い至りました。妊娠と次世代の健康に思いを馳せ、医学的胎教というテーマに付いて今日は考えてみたいと思います。
 私の主治医経験では500〜4500gの新生児が生まれており、ハイリスク妊娠から生まれる児の出生体重は実に9倍の開きがあります。この子どもたちの今は、さて、どうなっているのでしょうか。

【妊娠は負荷試験 妊娠・分娩と未病】
 母体と胎児のコミュニケーションの橋渡しは胎盤です。出産の頃には500g程度の重さになっており、母体と胎児の血液が豊かに注ぎ込み混ざる事なく必要な酸素、栄養素、代謝産物のやり取りをしています。母体の血液は妊娠中約1.5倍に増量し、しかも循環血症量が循環赤血球量の増加分を上回るために血液は希釈され、いわゆる“さらさら”血液が母体、そして胎盤を流れる事になります。この循環に異常を来した場合、胎内環境は劣化し、胎児は低出生体重児になってしまいます。この時しばしば胎盤には血栓、梗塞が認められるのです。母体体重の増加や胎盤からのホルモンの分泌も加わり、妊娠中にはいろいろの代謝が変化をします。特に、脂質と糖質代謝は劇的変化を来します。
 妊娠中はインスリン抵抗性になります。それに見合う十分なインスリンが分泌される場合には問題ありませんが、インスリン分泌能が不十分な場合(日本人に多いパターンでどちらかというと遺伝的バックグラウンド)や元々肥満症であったり、過剰な妊娠中体重増加の母体の場合には、妊娠中に糖代謝異常(妊娠性糖尿病)の病態が発現して来ます。胎盤が娩出され、妊娠が終了するとその病態は雲散霧消します。産科診療は通常産後一か月の産褥診で終了です。医療機関からフォローアップの手は以後差し伸べられません。しかし未病診療はこの機会を見逃してはなりません。なぜなら妊娠性糖代謝異常を経験した女性を5〜10年とフォローすると高率に境界領域更に真の糖尿病症例が発症して来るからです。妊娠を契機に未病診断と教育を中心とした早期介入が既に実施され始めています。
 軽症の糖代謝異常からはしばしば巨大児が出生します。肩甲難産の原因となり、母体は会陰裂傷に危険があります。さらに生まれてくる子どもは、娩出直前まで元気であったはずなのですが、分娩遷延から仮死で出生するかもしれません。また、鎖骨骨折や上腕神経麻痺の時には生涯にわたる健康問題をこの世に顔を出す瞬間に被るかもしれないのです。妊娠性糖代謝異常に対しては医学的評価と適切な予防的治療が時期を失せず導入されなければなりませんし、児を慈しむ気持ちは単にメンタルな面にとどまらず、食事療法、運動療法そして薬物療法をきっちり行うという義務を果たす母体の役割意識を醸し出していかなければならないのです。

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