さて2年間(1977-1979)の留学中のテーマは、『培養赤芽球における成人型→胎児型ヘモグロビンのスイッチング』でした。当時所属の国内研究室は臨床遺伝学で、特にヘモグロビンの構造と機能を専門としていました。新生児乾燥濾紙血が、先天異常早期発見治療のために用いられており、残血での異常ヘモグロビンスクリーニング検査を研究し、後輩はいくつかの弧発例を発見していました。いわゆる新生児マス・スクリーニング:ガスリー法の時代(日本では1977年全国実施)です。当時は5疾患(フェニールケトン尿症、メイプルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、ヒスチジン血症)が稀ではあるけれど早期発見にて成長発達に早期介入でき、疾病の予防につながる検査として実施されていました。1979年甲状腺 機能低下症(クレチン症)、1988年先天性副腎過形成が加わり、稀有なヒスチジン血症が1992年に削除されて現在は6疾患が対象疾患となっています。これまでに約4300万人以上の新生児が検査を受け、1万人以上の小児が障碍から免れたといわれています。でも技術が進歩してもっと多くの先天性代謝異常を乾燥濾紙血で発見しようという時代になりました。弊社でも、昨年にタンデムマスを導入し、技術的検討と安定運用に向けた準備を終え、この7月1日から実施いたします。タンデム・マスとはタンデム:すなわち二つの繋がった、マス(スペクトメトリー):質量分析器の略で、高速液体クロマトグラフィーに質量分析計2台が組み合わされた装置です。代謝異常により特異的に増加した有機酸や脂肪酸、アミノ酸等を分析してその責任代謝酵素(疾病)を特定しようという仕組みです。従来の6疾患に新たに13疾患が加わり、計19疾患が対象となります。質量分析という言葉には馴染みがないかもしれませんが、2002年ノーベル化学賞受賞の田中耕一さんは高分子のイオン化法を開発し質量分析の進歩に貢献し受賞されました。
小児の疾病は早期発見早期予防的治療導入が大切です。極最近日本でDOHaD研究会が発足し、私も入会を申し込んでいます。Developmental Origins of Health and Diseaseは、胎児期から乳幼児期の環境が、成人期の慢性疾患リスクに影響を与えるとする概念で、未病の原点は胎児期にありとする私の旗印ともいえる考え方です。弊社のタンデムマスもその一助として活躍してくれると思っています。未病とDOHaDについては私のコラムにありますので(№2~№8)、アーカイブまたひもといてみてください。生活習慣病(メタボ)のあなた!原点は胎児期、乳児期にあるかもしれませんよ~。
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