アップな料理写真で美味しさが伝わるHPを選んでみました。 http://jirokichi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-7ff0.html
今回は美味しい食事のお話で始めましたが、4月末から5月上旬にかけて100人以上の規模での腸管出血性大腸菌感染事例が相次いで発生しました。焼肉屋のユッケが原因と考えられているO-111とだんご屋の柏餅等によるO-157感染症です。5月18日の時点で前者は4人の死亡、後者は重体の2人が報告されています。いずれにもわずかながらの二次感染者(原因食材→感染者→感染者)が発生している模様です。関西では未だご記憶の方が多いと思いますが、今から15年前(平成8年)の7月中旬に堺市で学校給食によるO-157腸管出血性大腸菌の学童集団感染が発生しています。当時私は和泉市の府立母子保健総合医療センターに勤めており、広い会議室が消化器症状を訴える子ども達の緊急入院場所になったのを経験しました。患者数8000名、死者3名(内1名の方が母子医療センターで亡くなられており、お母様のカウンセリングを母性内科医として一度行いました)の大規模感染事例でした。実はこの年5月末に岡山県邑久郡邑久町(現瀬戸内市)の小学校、幼稚園で先行したO-157感染が発生しており、有症者数500名、死者2名を出しています。1996年の記録によりますと、この年の発生件数179件、患者数15000名、死者8名とあります。堺はカイワレ大根が原因と推定され、当時厚生大臣としての菅現総理が風評被害を否定すべく記者会見の場でカイワレ入りのサラダを食べている報道が印象的でしたが、さて、風評被害否定の場は当時よりもまして今東日本大震災後の日本では求められている現状と重ね合わせると、さらにスマートに、そしてエビデンスに則った総理としての言動を期待したいところです。 今回のO-111はVT(ヴェロトキシン)2を持っていることが確認されており、この毒力はVT1よりも強いのではないかと言われています。また一般に腸管感染症の重症度あるいは予後は、本来自分が持っている腸管内細菌叢、血液型物質やシアル酸を中心とする糖鎖の遺伝的背景(個性)による易感染性あるいは抵抗性などが、菌の毒力あるいは摂取菌量と同じように重要と考えられています。堺の発症状況分析では母子医療センターの小児科医によると、女児にやや重症化傾向(便秘理由?)がみられ、毎日朝ごはんの摂取習慣がある学童は軽症で済んでいる可能性があるようでした。これはただ朝ごはんを食べるか食べないかという事ではなく、日ごろの食習慣・食内容が個人の、特に腸管を主体とする免疫、疾病抵抗力に関連していることを示唆しているのではないでしょうか。 病院等において感染対策を経験すると、感染症は人の「無知、油断・慢心、手抜き」を見つけ出して見事に侵入してくるな~と実感します。腸管出血性大腸菌は毎年数千名の感染(有症状+保菌者)が報告されています。そのうち数%のHUS(溶血性尿毒症症候群)そしてさらに数%(10例前後)の死者が発生している、けっして珍しい病気ではありません。毎年初夏から初秋にかけてこの感染症はピークを迎えます。口は災いのもとにならぬよう、食を提供する職種の方も、それを美味しく食べようとする方も手洗いを基本として、安全と快食を心掛けていきたいものです。
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